スターチャンネルで『キング・コング』(1933年)を見ました。

昨日放映の『キング・コング』、スターチャンネルだからきっときれいな映像だろう、と一人合点をしていたのですが、実際はフィルムの細かい傷がかなり目立つものでした。残念なことです。

 

ただし、字幕はとても良かったです。

 

私の持っているDVDの字幕と比較してみます。

 

DVD「飛行機のお手柄だな」「いや 飛行機じゃない 美が野獣を射止めたのだ」

スター「奴も飛行機には負けたな」「いや 飛行機じゃない 美女に殺されたのだ」

 

英語では「飛行機が(奴を)やった」「いや、美女が(奴を)殺したのだ」とヲ格が共通し、主語が変わる文脈になっています。それを日本語にする時には、共通するヲ格を主語に立てて受け身にし、「(奴は)飛行機にやられた」「いや、(奴は)美女に殺されたのだ」のようにしたほうがより自然になるような気がします。スターチャンネル版の翻訳者はそのような方針の下、英語を日本語に移しかえているようです。

 

私は、映画やドラマの吹き替えや小説の翻訳で、原文とはちょっと違う(と思われる)、こなれた日本語に出会うとはっとして、その後嬉しくなります。

 

振り返ってみると、『スター・トレック』の1作目(『宇宙大作戦』です)で、カークの元恋人らしき女性が「夫に死なれてから」と言ったときには、跳び上がるほどびっくりしました。そのときの感動は今でも忘れられません。(同じ『スター・トレック』でチェックメイトを「王手」と言ったときには違う意味で跳び上がりそうになりましたが。)

 

今回のスターチャンネルの字幕は跳び上がるほどのびっくりはありませんでしたが、良い訳者の良い字幕に出会ったような気がしました。

 

ただ、今回のスターチャンネルでは『キング・コング』は翻訳者の名前が出ないまま映画が終わりましたので、誰の訳かは分かりませんでした。

 

最後になりますが、手元に角川文庫の原作本がありますので、最後の場面を引用します。

 

 「やれやれ! すごい光景だったな」巡査部長はいった。「飛行機がコングをやっつけるとはとても思えなかったよ」

 「飛行機がコングを倒したんじゃないよ」デナムがゆっくりした口調でいった。

 「なんだって?」

 「美女さ。やはり美女が野獣を殺したんだ」

 巡査部長はますます当惑した顔になった。(各務三郎訳)

 

キング・コング (角川文庫)

キング・コング (角川文庫)

 
キング・コング (創元推理文庫)

キング・コング (創元推理文庫)

 
キング・コング (ハヤカワ文庫NV)

キング・コング (ハヤカワ文庫NV)

 
キング・コング

キング・コング