『キング・コング』(1933年)
最近、スターチャンネルは1日1本、映画を無料で放送しています。番組表によると、今夜9時からは、1933年版の『キング・コング』ということです。
スターチャンネルでやるくらいですから、きっとデジタル修復をした高画質版なのだろうと思います。
私は一応正規のDVDを持っていますが、今夜の放送は録画して保存しておきたいと思います。
1933年の『キング・コング』で思い出すのは、80年代にTV放送された吹き替え版を録画したのをその時期、何度も何度も見返したことと、1990年代の初めにアメリカに行ったとき、当時発売されたばかりのカラーライズ版『キング・コング』のビデオが欲しくて何件もお店を回ったことです。結局、そのときは手に入りませんでした。カラーライズ版『キング・コング』の映像を初めて見たのはYou Tubeでのことですからずっと後になります。
『キング・コング』は他に1976年版と、2005年版がありますが、1976年版は石油会社が石油を求めて島に入り、石油が使い物にならないからコングを会社の宣伝に連れて帰るというストーリーに説得力があり、スタジアムや町並みにその時代特有の雰囲気がとてもよく出ているので大好きな1本です。あと、コングとヒロインの関係性の危うさも好きでした。
2005年版は大いに期待して見たのですが、コングよりも恐竜たちの描写がすごすぎて、ニューヨークに連れ帰るのは大猿よりも恐竜のほうが絶対にいいのに、とちょっと冷めた見方をしていました。コングとヒロインの心が通い合いすぎるのもどうかと思いました。コングと人との心が通い合う設定にするのならば、『コングの復讐』(1933年)のストーリーのほうがより自然な気がします。
キング・コング(King Kong) [DVD]劇場版(4:3)【超高画質名作映画シリーズ26】 デジタルリマスター版
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映画『炎の城』(1960年)を見ました。
『炎の城』を見ました。『ハムレット』の翻案映画である『炎の城』ですが、大まかな筋の展開は本当に『ハムレット』そのままでした。全体的にセリフが抑えられていたので、シェークスピア劇ならもうちょっと喋ってほしいと思いながら見ていましたが、見終わった今は時代劇としてのバランスがとれた良い映画だったように思いました。
それにしてもこの映画、「気※い」とか「偽気※い」とか「気が※っている」とかのセリフが多いのには驚きました。
この映画には
一部配慮すべき用語が
含まれていますが
作品のオリジナリティーを尊重し
そのままで放送します
放送の前に用語に関する注意書きが出ていたのでそれなりに覚悟してはいたのですが、一部ではなく全編に渡って「配慮すべき用語」が出てきていました。数えたわけではありませんがたぶん20~30回は出てきたと思います。
『炎の城』はこれまで一度もDVD化されてこなかったようですが、その理由に「配慮すべき用語」の壁といったものがあったのでしょうか。もしそうだとしたらもったいないことです。
『炎の城』の粗筋を読んだとき、『ハムレット』を時代劇として翻案するアイディアは素晴らしいと思いました。
デンマークの王子が死に際して隣国ノルウェーの王子に国を託す、という話を日本と東アジアの周辺国に置き換えることはほとんど不可能です。戦国時代の城を舞台にし、城主と若君の話に落とし込むことで初めて、一族の滅亡に際し隣国の若君に城を託してもおかしくない状況が作り出せるのです。たぶん、日本を舞台に翻案するならその時代のその状況以外にはありえないくらいピンポイントな設定なのだと思います。
ただ、この映画、突っ込みどころはかなり多かった気がします。
見ながら思ったのは、日本の時代劇にハムレットの狂気は似合わないかも、ということです。もし普通の時代劇に狂気の主人公が出てきたら、即座敷牢に入れられて話は終わってしまうでしょう。主人公の狂気を周囲の人が「偽気※い」と言うのは、要警戒しかし野放しという設定のためなのかもしれません。大川橋蔵の狂気の演技は嘘っぽさ全開でした。個人的には、この映画の雰囲気の中では12モンキーズのブラッド・ピット的な行動のほうが狂気表現としてはより似合っていたような気がしました。(言いすぎでしょうか?)
ラストはネタバレになるのではっきりとは言えませんが、民衆の登場シーンでは、アリオンの「みんなは、そんな僕とでも行って、そしてゼウスと戦うって言うんだね。行こう、オリンポスへ!」が心の中でずっとリピートしていました。また、オフィーリアの死はジョン・エヴァレット・ミレーの絵画のイメージが自分の中で強すぎたせいか、むしろの上の土左衛門が運ばれてきたときには絶句してしまいました。
もう一つ、強く言いたいことがあります。
フォーティンブラス! 早く来て! (ネタバレ?)
ここまでいろいろ書いてきましたが、『炎の城』は良い映画でした。特にカメラワークが良く、対決シーンの約1分の長回しや、民衆の登場シーンにはしびれました。
今回、『炎の城』を見ることができて本当に良かったと思っています。
『ハムレット』の翻案映画
NHK、BSシネマの映画カレンダーを見ると、明日の映画『炎の城』(1960年)はシェークスピアの『ハムレット』を翻案映画化したもの、ということです。
『炎の城』という映画については初めて知りました。私はシェークスピア作品の中でも『ハムレット』が大好きで、ある時期、さまざまな訳で読み比べたことがあります。とても読みにくいものでしたが、坪内逍遥の訳を読んだこともあります。
私がシェークスピア作品を読み始めたのは1982年のことです。その年、テレビで「NHK市民大学」という番組があって、小田島雄志が講師となって「シェークスピアの人間像」というテレビ講座を半年受け持っていました。その番組に触発されてなのですが、その当時は小田島訳の本が高くてなかなか手を出せなかったこともあり、とりあえず文庫本で読めるものを、という感じで30作品くらいをいっぺんに読みました。(小田島訳で読むのはずっと後のことになります)
ちょうどその頃、NHKで「シェークスピア劇場」という番組もあって、その年に放送された吹き替えの回はかなり真剣に見ていた記憶があります。見た作品はあまり多くはありませんが、『じゃじゃ馬ならし』とか『ベニスの商人』などがあったと思います。
『ハムレット』に関して言えば、ほとんどの訳本を読み、映像化作品も可能な限り見てきたつもりではいたのですが、『炎の城』は全くのノーマークで存在すら知りませんでした。明日の放送が楽しみです。
ちなみに、80年代に放送された「シェークスピア劇場」ですが、その後DVD化されていて現在でも買うことができるようです。しかし、字幕のみで吹き替え音声がないのがとても残念に思われます。
216,000円(税込)
228,000円(税込)
DVD 全37巻
セット本体価格 845,715 円+税日本語字幕版監修:小田島雄志(東京大学名誉教授)
発行: 丸善出版株式会社日本語字幕版制作:株式会社テレシス
両方とも字幕は同じものだと思われます。1作品当たりでいえばテレシス版は12,000円で、丸善版はその約2倍の値段ということになりますが、これは丸善版が学校や図書館での上映や貸し出しを前提にしているからということのようです。
私は韓国の教保文庫でたまたま見つけた「シェークスピアコレクション(BBC)」のDVDを買いました。字幕は英語と韓国語だけですが、全巻そろって約4000円で見つけたときには驚きました。箱にはリージョンコード3とありましたが、日本の機器で普通に再生できましたのでもう一度驚きました。
シェークスピアコレクション:スリムケース
39,800ウォン
http://music.kyobobook.co.kr/ht/record/detail/8809154123311?orderClick=LAL&Kc=
教保文庫の販売ページを見ると他社のDVDもありました。
55,000ウォン
http://music.kyobobook.co.kr/ht/record/detail/8809300662022?orderClick=LAL&Kc=
残念なことに、現在はどちらのセットも「品切れ」となっています。
私は英語字幕でBBC全集のかなりの作品を見ましたが、やはり日本語が付いてないとつらいものがありました。かなりもやもやします。1年ぐらい必死になって英語の勉強をし直せば解決するような気もしますが、できることなら80年代の吹き替え版でBBCの全作品を心行くまで見てみたいと思っています。この夢、生きているうちにかなうのでしょうか。
最後になりますが、私はここまでずっと「シェークスピア」と書いてきましたが、世間では「シェイクスピア」と表記されることが圧倒的に多い気がします。「シェークスピアの人間像」講師の小田島雄志の著作を見ても、NHK市民大学のテキスト以外は一貫して「シェイクスピア」と表記していますし、他の訳者もほとんどが「シェイクスピア」を採っています。学術団体の名称が「日本シェイクスピア協会」だと知ったときには「シェイクスピア」なのかなとちょっと悩みました。
ただ、辞書や百科事典の見出しは「シェークスピア」なんですよね。
NHK的には「シェークスピア」らしいのですが、ただ、「100分de名著」でハムレットをとりあげたときに買ったテキストの表紙には「シェイクスピア」とありましたし、即興で物語を作る数年前の番組も「シェイクスピア・ゲーム」というタイトルでした。
amazonを見たら、イギリス版の輸入DVDの販売ページがありました。価格は14,980円。商品説明には「英国輸入盤。映像出力はPAL(日本はNTSC)方式となりますので、一般的な国内向けプレイヤー、PS3にて再生できません。ご覧になる際はパソコン又はNTSC⇔PAL変換のマルチDVDプレイヤーで再生する必要があります。また日本語字幕はございません。」とあります。amazonイギリスで同じDVDを見たら、今日のレートで約11,000円でしたから、送料・手数料が約4,000円ということになるのでしょう。
集英社コバルトシリーズ
今日の昼過ぎ、BSプレミアムで『野菊の墓』を放映していたのでなんとなく見ていました。
1981年の映画ということですから松田聖子が十代だったころに作られたアイドル映画のひとつと思いながら見ていましたが、主演二人の演技のみずみずしさも含め、作り方がとても丁寧であったため、いわゆるアイドル映画という感じは一切しませんでした。
『野菊の墓』は原作となった小説が発表されたのが明治39年(1906年)ということですから、まだ夏目漱石や森鴎外が生きていた頃の作品ということになります。調べてみたら『野菊の墓』の作者、伊藤左千夫が亡くなったのが1913年とありましたから、今年は没後105年ということになるのですね。
映画に話を戻します。私は今日、この映画のエンドロールを見ながら「あっ」と声を出しそうになってしまいました。というのも、次のように書いてあったからです。
原作 伊藤左千夫
「野菊の墓」
私が『野菊の墓』を読んだのは、たしか岩波文庫でした。だからかもしれませんが、集英社ならばコバルトシリーズではなく集英社文庫のほうが妥当のような気がしていました。『野菊の墓』が当時、少女向けの集英社コバルトシリーズの一冊として扱われ、読まれていたいうのがちょっと意外な気がしました。(※1991年以降は集英社文庫として出版されているようです)
私は昔「小説ジュニア」や、その後継雑誌の「コバルト」を読んでいたこともあり、コバルトシリーズとの親和性はかなり高いほうだと思っています。後には雑誌では読まなくなり、文庫化されてから読むようになりましたが、そのころ読んで今でも印象に残っているのは氷室冴子の『なんて素敵にジャパネスク』シリーズや『ざ・ちぇんじ!』『恋する女たち』、藤本ひとみの『まんが家マリナ』シリーズあたりでしょうか。そんな私も今野緒雪の『マリア様がみてる』シリーズが始まった頃にはコバルトシリーズをなんとなく「卒業」していました。
今思い出すと、「小説ジュニア」を読んでいた頃は吉田としという人の作品がいちばん好きだったのですが、Wikipediaで調べたら、この方、1988年に亡くなったとのことでした。知りませんでした。今年がちょうど没後30年ということになるのですね。
Amazonで検索してみたら、吉田としの作品は現在すべて絶版のようで、しかも電子書籍化された作品もないようです。ちょっと残念な気持ちになりました。